確実に死ぬ一秒前の恐怖を知っているか。

【ストーリー】
近未来では科学技術の進化によって老化は完全に無くなる。全ての人間の成長は25歳でストップする。そして自分の左腕に刻まれた時計が余命1年のカウントを始める。この未来ではもう一つの特徴がある。それは「時間=通貨」なのだ。購入の対価として時間を払うのだ。そして労働の対価も時間である。限られた一部の富裕ゾーンの住人は永遠の命を得るが一方では多数のスラムゾーンの人々は余命が一日もない。そのため大半の人々は生き続けるためには労働か人から時間を奪わなければならない。ある日、スラムゾーンに住む青年ウィルは富裕ゾーンからやって来たハミルトンをスラムのバーで見かける。彼は永遠ともいえる時間を生きることに苦悩していた。その彼からウィルは彼の116年という時間を譲られた。その日の夜にウィルの目の前で母親のレイチェルがわずか1秒足りないために息絶えてしまう。残酷な現状に打ちひしがれたウィルはこの世界の謎を解くことを決意して富裕ゾーンへ向かう。そこで出会ったのは、変化のない日常生活に辟易していた大富豪の娘シルビアと出会う・・・。


SF映画は設定が重要だ。現実ではあり得ない映画の設定だからこそ起こる真新しい出来事が観客を引き付けているからだ。タイムマシン、パラレルワールド、遥か彼方の銀河の世界等、その設定は様々あるが何処かで観たことのある設定では面白味が半減してしまう。

近年、特にマトリックス以降でSF映画の流れが変わったと思う。SF映画の設定でコンピューター内での出来事が大変多くなった。

だが今回の『TIME』は昔からある時間を使った映画だ。そのためどういった世界設定なのか大変興味深かった作品である。

映画の胆となるのは死ぬまでのタイムリミットが自分の左腕に表示されるという点だ。つまり自分が死ぬまでの時間があと何秒なのかがわかる。

普段、死を意識しないで生きている私たちは劇中の人々の苦悩を想像できるだろうか。スラムの人々は労働の対価として時間を支払われても24時間もストックがない状態。明日は生きられるのか分からない先が見えない日々。もしこんな世界があったらと想像してみると劇中に出てくる時間の強奪もやむなしと思えるだろう。誰も死にたくはないのだから。

劇中ではこの余命が分かるという設定が上手く使われている。人との時間の奪い合いで自分の余命が延びもするが縮まることもある。そして死ぬまでのカウントダウン。余命まで数秒とまで追い詰められた主人公たちの緊迫感が腕に表示される時間で認識することでより伝わってくるはずだ。

自分がこの世界だと生きられるのか?といった想像を巡らすのもこの手の映画を観た後の楽しみの一つだ。是非、観た際は映画の中に自分を置いてみて考えてもらいたい。きっと「楽しかった」という映画の感想だけではない映画の楽しみが待っているはずだ。

役者ではヒロインであるシルビア役「アマンダ・サイフリッド」に注目してもらいたい。彼女は『赤ずきん』という作品でも主役を演じた女優なのだが実に魅力ある女優だ。きっと今後も話題作にでてくるだろう。

ちなみにここからはこの映画の感想とは外れるが、この様な時間を扱った設定の映画では度々「永遠の命」が出てくる。人の命と時間は切っても切れない関係のため、永遠の命が出てくるのは仕方がないかもしれないが、永遠の命ではない新しい設定の映画が出てくるのを期待している。