人生、諦めたら終わりだよ。

【ストーリー】
アダムは公営ラジオで働く27歳だ。律儀な性格だが、ガールフレンドで画家のレイチェルは、アーティストのせいかマイペース。同僚で親友のカイルも女好きでお気楽なタイプだ。ある日、アダムは腰の痛みが治まらないので病院で検査を受けることにした。病名は「悪性神経鞘腫 神経線維肉腫」。つまり「ガン」と診断される。酒もタバコもやらないアダムだが、このガンは5年後の生存率が50%。転移後の生存率は10%という過酷な病気だった。腹をくくったアダムは、医師の指示に従って抗ガン剤治療を受け始める。さらにはセラピストのキャサリンの診察を受けることにした。まだ24歳でセラピーの経験が少ない彼女に不安を抱きつつアダムは前向きに病気と闘おうとするが・・・。

テーマは重たいはずだ。癌に侵された青年の病気の克服までを描いた内容は否応なく重たい内容になるだろう。だがこの映画は所々に笑える演出があり、ただ暗く重い日常を過ごす主人公ではないのだ。

アダムは最初は病気にも前向きに付き合うことを決める。癌をナンパの道具にして女の子と楽しもうとするほどだ。また彼の周りにも明るさがある。どこか頼りないセラピストのキャサリン、女と遊ぶことしか考えないカイル。二人とアダムの会話がこの映画を明るくさせている要素の一つだろう。

アダムは病院である二人の人物と出会う。それは年老いた老人二人組だ。彼らはアダムと同じく抗がん剤注射の治療を受けている。人生の先輩である老人との会話はジョークが冴えわたり、当人たちが癌だという悲壮な感じは一切伝わらない。癌をネタにしているほどだ。

だがこの二人の内、一人の病死が切っ掛けで物語は大きく展開する。今まで前向きに病気と向き合っていたアダムも癌による人の死を知ることで今までの癌に対する感情は持てなくなっていく。その心情がリアルであり、追い詰められていく様に心が締め付けられるだろう。

次第に周りの人たちの八つ当たりを始めるアダムは患者の正直な心情が表れている。きっと自分だったらアダムほど耐えられないだろうと自分と置き換えさせる出来まえだ。

アダムは最終的に手術が必要になる。手術前の恐怖は味わった人にしか分からないだろう。生きるか死ぬかが決まる勝負の手術に挑むアダムの顔には凄みがあった。この凄みはこの映画のフィナーレに向けての盛り上がる場面にピッタリだ。

この映画で改めて気づかされるのは周りの人々の大切さだ。アダムは過剰に接しすぎだと邪険にする母親の存在の大切さ。普段はおどけて頼りない友人が実は真剣に付き合い方を考えている友人の優しさと心強さ。どれもアダムの周りの人は暖かく彼が決して一人でないことに気づかせてくれる。

脚本家が実際に癌になり、克服した経験を元にストーリーが書かれているため説得力のある内容になっている。果たして自分が余命幾ばくもない状態に周りの大切さに気づくことができるだろうか。逆に友人が癌になった時に彼についてどれほど真剣に考えて付き合うことができるだろうか。自分の周りと人生について考えさせられるハートフルな作品でした。

※ここからは不謹慎かもしれないが印象的な台詞がある。
アダムが友人カイルに余命を聞かれた際に「50%」と答える。そこでカイルは「ギャンブルなら最高」と返すのだ。実にウィットにとんだ冗談だ。実際、目の前に癌になった友人がいたら言えるようなセリフではないのだが、人生の余裕の持ち方というか目の向け方の参考になる台詞だった。

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